研究内容

1. がん患者さんはなぜ痩せ細るのか?

がん悪液質は、進行がん患者さんの80%でみられ、全がん死亡の30%に関与します。最近、この疾患横断的な病態を引きおこす新たな免疫細胞をみつけました。この細胞がどのようにして誘導されるのか?治療標的として有用か?を調べ、がん悪液質治療のブレイクスルーをめざします。
(論文投稿中)

 

2. がん患者さんの身体の中で何がおきている?

がん細胞ひとつで、身体にがんはおこりません。がん組織のなかにもクローン間のきびしい生存競争があります(がんの不均一性)。がん組織のまわり(腫瘍微小環境)には、さまざまな免疫細胞が存在し、がん細胞を攻撃します。この反応が過剰になると、全身の組織や臓器にダメージをあたえることもあります(腫瘍随伴症状)。また、身体をまもるはずの免疫細胞は、時としてがん側に寝返り、がんの進行(浸潤・転移)を助けます。がん組織のクローン間相互作用、がん病態に関わる免疫異常の分子基盤を解き明かし、新たな治療標的を探ります。
Cancer Discovery 8(11): 1438-1457, 2018、Cancer Science 110(5):1510-1517, 2019)

 

3. ミトコンドリアが治療の標的になる?

太古の昔、真核生物と共存する道を選んだ好気性細菌は、細胞のエネルギー産生に欠かせない細胞内小器官ミトコンドリアとなりました。今、老化や炎症、がん、様々な病態で、このミトコンドリアの形態異常が注目されています。がんにおけるミトコンドリア形態異常の意義を解き明かし、それを標的とする新規治療法の創出をめざします。
Cancer Discovery 12(1): 250-269, 2022、Cancer Science 14(7):2722-2728, 2023)